S6(小さなチーム運営)の3回目です。この日は「ダッシュボードの完全仕上げ会」。教科書の第3回ミニワーク「会社の操縦席」に沿って、講師が実際に使っている事業ダッシュボードを見本に、参加者それぞれが自分の会社の画面を作り込みました。
前回は、オントロジーのデータをダッシュボードに出し、指示を出す画面にするところまで進めました。今回のテーマは、その画面を毎日開いて仕事が始まる「操縦席」に仕上げることです。何を載せ、何を載せないか。誰の報告を、どの順番で上に出すか。顧客と共有する画面はどう作るか。参加者3名の画面を見比べながら、設計の決まりを固めていきました。
講師の操縦席は、AIエージェントの動きと報告の新しさで並ぶ
講義の冒頭、講師が自身の事業ダッシュボードを共有しました。教科書に載せた見本を、そのまま自分の会社に当てはめて動かしているものです。
いちばん上には、講師が使っている複数のAIエージェントが、今日それぞれ何をしているかが並びます。最近はAI同士がコマンドライン(CLI)で仕事を投げ合うようになり、放っておくと誰が何をしているのか分からなくなるためです。その下に、事業ごとの状況、自分が抱えているタスク、読み込んだメールから上がってきた要対応の事項が自動で記載されます。「WEBの最終更新から日が空いている」「新しい技術が出たのでニュース記事にしてはどうか」といった提案も、ここに上がってきます。
メンバーからの報告は、届いた順に上へせり上がる仕組みです。2日前に報告をくれた人のカードが上に来て、報告が途絶えた人は下へ沈んでいきます。講師が忘れていても、最新の状況がまとまって目に入ります。
カードには、報告の内容から「次にこう指示するだろう」という指示の候補があらかじめ用意されていて、ボタンひとつで渡せます。人への連絡もメールの作成まで画面から進められます。細かい指示が必要なときだけ、改めて自分で指示を書きます。
食品事業に取り組む参加者からは、「事業ごとに分けている画面を、会社として1つに統合すべきか」という質問が出ました。講師の答えは、事業ドメインごとに分けて横に並べる、でした。講師の会社は複数の事業を束ねる立場なので、会社を上に置き、その下にWEB・メディア・植物事業といった事業を横に並べています。AIで作ったサービスは次々に増えるので、事業ごとにまとめておかないと管理しきれなくなるからです。
止まっているものではなく、動いている数字を並べる
ダッシュボードに何を載せるかについて、講師と不動産事業に取り組む参加者が口をそろえたのは「一覧性」でした。
注意点もあります。AIに「止まっているものを出して」と頼むと、本当は止まっていないものまで大量に挙げてきます。そこで逆に、メンバーから届いた最新の情報や、動いている数字を中心に並べます。SNSの再生数やアクセスのような外から入ってくる数字は自動で取得し、1週間ごとに更新する。講師は週1回のライブ配信に合わせて、過去のデータをまとめて取り込んでいます。
業務委託・アルバイト・パートといったメンバーは、顔写真のアイコンで並べ、頼んでいる仕事と納期を表示します。納期を過ぎた仕事は赤くなり、画面から確認の連絡を送れます。外注先には、完了報告を電話ではなく報告書やメールで出してもらうことが大事で、そのための手間を減らすAIの使い方を相手に教えてあげるのも有効だ、という話もありました。
人の管理と事業の管理のどちらを上に置くかは、自分が見に行く回数の多い順で決めればよい、というのが講師の考えです。
セキュリティについての質問も出ました。コードを置いているGitHubに、APIキーをそのまま置いてよいのか、という質問です。講師の答えは、APIキーはAIに読み込ませない別のフォルダで管理すること。そのうえで、ダッシュボード自体はスマホからいつでも見られるようにクラウドに置き、ログインにはGoogleアカウントを使う。入ろうとする人は、Googleアカウントのセキュリティを突破しなければならなくなるからです。
朝のまとめを画面に固定し、抜け漏れに気づく
学習事業の事務局は、講師ごとのファイルから交通費などを自動で計算する管理画面を共有しました。データはGoogleドライブと連携していて、これまで手書きで管理していた講師とのマッチングも、講師側が見られるようにしています。修正があれば講師から知らせてもらう運用です。
さらに事務局は、複数のプロジェクトを一貫して見られる画面に取り組みました。課題は、AIに頼んで作ってもらっていた引き継ぎリストや連絡先リストが、毎朝のまとめ(モーニングブリーフ)に出てこない日があることでした。
そこで、モーニングブリーフの内容をダッシュボードに統合し、表示する項目を固定しました。表示の枠が決まっていれば、「今日はメールを取り込めていない」といった抜け漏れに、その場で気づけます。講師も同じように、画面にモーニングブリーフのボタンを置き、どの情報から何を拾ったかを画面上に書き出させているそうです。
講師からは、もう一つ助言がありました。授業の説明のように、毎日変わらない固定の情報は画面に要りません。報告によって変動するデータを、きちんとアーカイブしていくことが大事です。
引き継ぎがメールしかなくても、AIで復旧できる
事務局からは、この1週間の体験談も共有されました。前任者からの引き継ぎがほとんどない状態で、手がかりは保護者や生徒とのメールのやり取りだけ。そこで、2か月分のメールをAIに1件ずつ開いて読ませ、授業の方針や、残っている振替授業の数を自力で復旧したそうです。
パソコンの画面を操作するAIは、少し前まで実用には遠いものでした。講師は、それが最近劇的に変わったと話します。講師自身も、ブラウザを操作するAIに地域の出品情報を探させ、条件に合うものに問い合わせを送り、返事が来たら知らせてもらう、という使い方をしているそうです。
事務局の言葉が印象的でした。のんびり楽しく暮らしている人にAIは要らないかもしれない。でも、誰にも頼れない窮地のときこそ、AIがいちばん助けになる。講師も深くうなずいていました。
顧客と共有する画面は、案件ごとに中身を変える
不動産事業に取り組む参加者は、2つの画面を見せてくれました。
1つは、物件ごとの進捗が一覧できる管理画面です。Googleアカウントのログインで本人しか入れないようにしたうえでWEBに公開し、毎日朝10時と夕方6時に自動で更新されるように設定しています。パソコンが立ち上がっていれば、記録した内容が随時反映されます。
もう1つは、そこから派生させた、物件ごとに顧客と共有する画面です。販売を始めてからの経過日数、次の報告予定日、お客様にやっていただくことと自社でやることが並び、不動産ポータルサイトの掲載状況も取り込まれています。これまでのやり取りの記録からも、必要な情報を拾い上げています。パスワードを指定して入れるようにし、デザインは顧客の好みに合わせて変えられます。
講師がここで強調したのは、テンプレートは共通でも、中身は案件ごとに変えてよいということでした。たとえば土地の売買の案件なら、近隣の取引の動きを月に1回入れて見守る、というように、その案件でモニタリングしたい項目を自由に入れ替えます。全物件を同じ項目に揃える必要はありません。
画面にAIを置くなら、APIを使う
ダッシュボードの上で顧客とのやり取りまでAIに任せたい、という話題から、講師がAIの使い方の違いを図で説明しました。
普段使っているチャットやCLIは、月額の定額契約(サブスク)で、自分のパソコンからAIに頼む使い方です。一方、APIは使った分だけ払う従量課金で、サーバー上に置いた仕組みから直接AIを呼び出せます。物件の情報や進行状況をサーバー側に簡易的なオントロジーとしてMarkdownで置いておけば、それを前提にAIが顧客に答える、という仕組みも作れます。
見た目は、毎日開きたくなるものにしてよい
この日、もう一つ盛り上がったのがデザインです。講師は、意味のない飾りは要らないが、かっこよく作ることは大事だと話しました。毎日何度も開く画面だからこそ、気分が上がる見た目にしておくと続きます。
事務局は高級ブランドのような世界観の画面に作り替え、不動産事業の参加者は動きのあるアニメーションを入れて、顧客の好みに合わせた画面を作っていました。どちらも、ひと目で状況が読み取れる見やすさは保ったままです。
この日の到達点
ダッシュボードを「眺める画面」から「仕事が始まる操縦席」に仕上げました。事業ごとに画面を分けて横に並べ、動いている数字と報告の新しさで並べる。朝のまとめを画面に固定して抜け漏れに気づき、顧客と共有する画面は案件ごとに中身を変える。次のステップは、それぞれの画面を毎日の仕事の起点として使い続け、外注先からの報告をメールや報告書で受け取る流れを整えることです。この日の学びは、SOVREN FrameworkのS6に反映しています。
この勉強会について
経営者向けのAX実践スクールとして、SOVREN Frameworkを使った実践を毎週行っています。教材はSOVREN Frameworkで全文を無料公開しています。