第13回でお金のデータを集め、第14回でAIに分析させました。3回目のこの日は、その運用を毎月回す仕組み——月次決算を、参加者と一緒に作りました。
冒頭に伝えたのは、S5のワークは現実の数字が見えてくるため、気が重くなりやすい、ということです。ただ、運営していくうえで、これほど応用の利く技術はありません。
月次決算とは、予算どおりに回っているかの確認
大きな会社では、経営部門が年に1回、予算を決めます。毎月の月次決算は、その予算どおりに会社が回っているかを確認する作業です。
小さな会社ほど、月次で締める効果は大きくなります。締めないままだと、資金が尽きるとき、あるいは次の決算まで、異常に気づけません。月ごとに締めていれば、キャッシュアウト(資金切れ)の兆しに早く気づけます。
締め日は、会社の形で決める
- データだけで済む会社は、毎月10日
- アルバイトの労働時間などがある会社は、15日
- 店舗がある会社は、20日
この日、参加者は毎月15日に前月分を締める設定にしました。証憑(領収書などの根拠書類)を集める期限も、同時に決めておきます。
年間予算は、決算月の1〜2か月前に12か月分
予算は、決算月の1〜2か月前に、12か月分をまとめて作ります。ここで大事なのは、去年のデータから推測しないことです。今年の実態に合ったデータで、来月の支払い予定を並べます。家賃や制作費などの支出は、ミーティングのたびにファイナンスのフォルダへ記録して指示するルールにしました。
AIに「予算と実績のズレ」を読ませる
締めたあとが、AIの出番です。月の支出予定と実際にかかったコストを比べさせ、ズレを分析させます。たとえば、食品事業で容器の価格が上がっていた場合、それに月次で気づければ、仕入れ先を変えるのか、値段を変えるのかを、早く決められます。
集めたデータをAIに読ませ続けると、新しい設備を入れるか、資材を変えるかといった、会社のあらゆる判断にお金の情報が反映されます。会議に数字が乗るので、空中戦になりません。
人件費は、締めの前に必ず入れる
見落としやすいのが人件費です。月次決算の前に、必ず計上します。労働時間を集めるとき、提出日を守らない人がいるなら、契約の段階で提出日を決めておきます。運用を人に頼むより、決まりに頼るほうが続きます。
経費は、個人と混ぜない
経費管理でいちばん手間なのは、紙のレシートとネット決済が混ざることです。次のように整理しました。
- 紙のレシートは、写真を撮って専用フォルダに残す。原本は100円ショップのメッシュポーチなどで保管する
- 決済は、会社用のクレジットカードに一本化する。名義は個人でも、会社用と決めて使う
- 領収書と経費のデータは、専用のドライブに集める
個人の支出と会社の支出が混ざると、後の自動化がすべて崩れます。第13回で決めた「明細のレベルで分ける」の続きです。
決算期を、売上の山に合わせて置く
税金の話も出ました。夏に売上が急に増えても、期末までに使い切れない仕入れや在庫は「資産」として計上されます。経費にならないので、税金対策としては働きません。
効くのは、期間内に消化される広告費などに、予算を当てることです。売上が大きい時期の3か月ほど後に決算を置くと、納税のタイミングと経費の使い道を合わせやすくなります。
年間の山をどこに置くかも、同じ考え方です。新学期の4月、GWのある5月、6月に年間最大の売上をつくる。7〜8月は、海外などに出て調整する。事業の設計と決算の設計は、つながっています。
高く売るなら、理由がいる
食品事業では、1個の価格を相場の数倍に置くかどうかの話も出ました。相場が決まっている商品を高く売るには、おいしいだけでは足りません。ストーリーと付加価値が要ります。お酒とのペアリングや、百貨店の地下売り場のような、ブランドで選ばれる売り場を想定した展開を考えました。
クラウドファンディングも勧めました。利益は出にくくても、宣伝、事前の資金回収、リサーチを兼ねられます。
災害に備えて、現金を分けておく
台風や地震のような災害は、いつか起きるものとして扱います。保険で対応する部分と、現金の内部留保(生活防衛資金)で補う部分を、最初から分けて貯めておきます。
収入が変動しやすい、人の手に頼るビジネスでは、特にこれが効きます。ファイナンスのデータを組んでおけば、安全性が上がります。
資産表で、資金切れを先に見つける
この日、参加者は毎月1日に、前月のBS・PLと入出金のデータがメールで届く設定を済ませました。年間の予算を組むと、ある月に「売上から支出を引くとマイナスになる」可能性にも気づきました。
そこで、現金預金まで含めた資産表(BSとPLを合わせたもの)を作り、キャッシュアウトの可能性を確認します。この手順は、AIが繰り返し使えるように「月次決算スキル」として保存します。
この日の到達点
月次決算の手順を、締め日、証憑の集め方、予算との比較、資産表の確認まで決めました。次のステップは、10月15日に最初の月次決算を実行し、その報告書をもとに役員会議を開くことです。
この勉強会について
経営者向けのAX実践スクールとして、SOVREN Frameworkを使った実践を毎週行っています。教材はSOVREN Frameworkで全文を無料公開しています。