前回までで、LPを何十枚と並べられる量産体制ができました。ただし量産できるだけでは、出てくるものの質は毎回バラつきます。作り手が毎回チェックして直すなら、結局そこが上限になる。

そこで今回扱ったのは、品質を人間の記憶と気力で維持するのをやめる方法でした。売れるLPの条件を8つに分解し、それを企画書のテンプレートと、作業フォルダのルールファイルに埋め込む。以降は生成のたびに条件が自動で効き、できあがったものを同じ基準で検品させる——そこまでを1本の線にする回です。

「AIって、こういうティップスがないと、本当にゴミ生産機にしかならない」

私が運営しているのは、横浜の経営者向けAX(AIによる業務変革)実践スクールです。この日の参加者は3名。不動産・食品・教育、それぞれ自分の会社を持つ方たちです。

Ontology incubation 2026年8月3日 第9回で、売れるLPの条件を画面で示しながら解説している様子

まず、どこを人間が持つかを決める

自動化の設計は、機械に何をさせるかより先に、人間が手放さない部分はどこかを決めるところから始まりました。

担当持ちもの
人間訴求の中身と、一次情報の供給
AI制作・実装・体裁
ルールファイル品質の維持と、やってはいけないことの抑止

この線引きから、デザインの扱いが決まります。

責任を持つべきはデザイン部分ではなく、訴求の中身のほう

ネット上には、AIエージェントに読み込ませるデザイン用のスキルが大量に出回っています。しかし講師の立場は明確でした。Web制作を生業にしていないなら、最後のクオリティを追い込む必要はない。理由は陳腐化の速度です。エージェント本体の素の能力が上がり続けているため、1〜2ヶ月後にはスキルを入れないほうが良い結果になる。この逆転がここ2年ずっと続いています。

だからスキルを入れるなら1週間から1ヶ月で使い捨てる前提にし、定期的に整理する。放置するとどうなるかは実例で共有されました。不要なスキルや過去のエージェント設定が溜まり続け、講師自身の情報体系は一度作り直しになっています。現行は4代目だそうです。

整理の習慣も具体的でした。作業フォルダは分けすぎない(あとで切り分けが面倒になる)。フォルダ整理は週1回(放っておくとAIが勝手な場所に保存し始める)。自動化の基盤そのものを腐らせないための運用です。

AIが生成できない唯一の材料が、実体

では人間が供給する一次情報とは何か。この日の中心にあったのが実体でした。

前提として、読み手はもうAI生成のLPを見慣れています。検索結果のクリックが有料枠へ移る動きは数字にも表れていて、主要カテゴリを追った直近1年の調査では、自然検索のクリック占有率が11〜23ポイント下落し、テキスト広告は7〜13ポイント上昇しました。最も動いたカテゴリでは有料枠の合計が16%から36%へと倍以上になっています(いまも多数派は自然検索で、同じカテゴリで50%です)。広告として作られたページを日常的に大量に見ている層が、急速に増えているということです。

その読み手に対して、綺麗なだけで中身のないページは秒で離脱されます。離脱の理由はデザインの素朴さではなく、中身に実態がないことです。

ゴーストレストランが選ばれなくなった理由

例に出たのが、コロナ禍に急増した「ゴーストレストラン」でした。実店舗を持たず、他店の厨房だけを借りてデリバリーアプリの中だけで営業する形態です。それが今は減っています。理由は品質だけではなく、利用者が実体のなさを見抜くようになったから。気になった店を検索し、住所を見て、外観を確認する——その行動が普通になった結果です。

この見立ては数字でも裏づけられます。米国のゴーストキッチン市場は2024年に前年比5.2%減と縮小に転じ、デリバリー大手は2023年までに品質や重複を理由として約8,000件の仮想レストランをプラットフォームから削除しました。そして利用者の不満として繰り返し挙がっていたのが、まさに実体が見えないことでした。

ここから逆説的な原則が出てきます。オンラインで売るビジネスほど、実店舗があることが効いてくる。たとえば手仕事の器を売るブランドなら、地方に小さな工房兼店舗を構え、地元の方に手伝ってもらいながら、そこを実体として持ったうえでオンラインで売る。販売はオンラインでも、実在の作り場があるかどうかで見え方が変わります。

店舗がない場合も、実体は店舗でなくて構いません。セミナーや勉強会の写真、オンライン開催ならその画面、実在の住所と営業時間、働いている人の姿。そして——

実際にやっている人が参加して、そこにムーブメントが起きている——それ自体が、AI時代においてはサービスであり価値になる

写真は量が効きます。生成AIで「それっぽい部屋」は簡単に作れるため、1枚では実在の証明になりません。周辺環境まで細かく押さえるほど確からしくなります。動画や音声はさらに強く、伝わるのは情報だけでなく実在する人間が喋っているという事実です。

だからAIには一次情報を読ませる

AIにWeb検索をさせて記事を書かせると、世の中の平均値を混ぜたものにしかならず陳腐化します。一次情報を伝える手段がAIであると捉える。たとえば顧客との面談を録音し、個人情報を除いたうえで記事化する。素材が自分の現場から出ている限り、出力は他社と重なりません。

トレンドも、記事ではなく企画に組み込む

教育事業の参加者から、実務で詰まっていた質問が出ました。「トレンドのキーワードを入れようとすると、自分のログから作った記事と内容がズレてしまう」。

回答は、扱う場所が逆だ、というものでした。トレンドをメディア側に寄せると、ただのバズ狙いになり、誰もが同じことを書くのでコモディティ化します。そうではなく企画そのものをトレンドに寄せる

塾業界であれば、英語検定の入試利用が当時のトレンドでした。だとすれば記事を英検に寄せるのではなく、企画自体を「大学入試における英検利用セミナー」にしてしまう。すると、そこで交わされた会話の記録が、自然とトレンド性を含んだ一次情報になります。それを素材にすればいい。

あわせて、情報体系に何を溜めるかの線引きも示されました。溜めるのは競合分析まで。トレンド調査まで溜め込むと、古い情報が古い情報を呼び、手がつけられなくなります。


8要素は「作り方」ではなく「合格条件」

ここからが今回の本体です。売れるLPの条件を8つに分解します。ただしこれは制作のコツとして覚えるものではありません。企画書のテンプレートであり、同時に検品の基準として使うものです。

#要素満たしているか
1ファーストビューキャッチコピー/実体を示すアイキャッチ/CTAボタン/実績・権威性が入っているか。離脱の判断は最初の十数秒で終わる
2悩みへの共感「まさに自分のことだ」と思わせ、読み進める理由を作れているか
3解決策の提示その悩みをどう解くかが書かれているか
4ベネフィット機能スペックで終わっていないか。使うとどんな良い未来が得られるか
5強み・差別化競合分析の結果が反映されているか
6お客様の声・実績実データを渡しているか(渡さないとAIは捏造する)
7オファー・特典後述
8よくある質問・導入の流れ問い合わせから提供までがステップで書かれているか

この表を 訴求リスト.md として1本のファイルにし、企画書を作るフォルダに置いておく。以降は「この訴求リストを参照してLPの企画書を作って」と言うだけで、8要素が入った企画書が出てきます。

重要なのは当てる場所です。

8要素はHTMLではなく、企画書の段階でチェックする

実装後に当てると、末端の調整の話になってしまう。企画書に当てれば、構成そのものが直ります。

検品をAIにやらせる

そして8要素は、そのまま検品リストになります。既存のページを開いて「このページは8要素を満たしているか」とエージェントに問う。この日、実際にそれをかけた参加者がいて、返ってきた指摘が「CTAボタンがない」でした。

素人ほど、売り込みっぽく見えるのを嫌ってCTAを下のほうへ隠します。しかし答えは逆で、ファーストビューに必須、しかもクリックされなくてよい。

理由は、人が何に恐怖を感じるかにあります。

相手が何を求めているのか分からないと、人は怖い

講義では婚活が例に挙がりました。相手の目的が分からないまま会うのは怖い。かといって「あなたも相手を探しているんですよね」と自分から確認しないと進めない関係も、それはそれで怖い。目的が最初に示されていないこと自体が、不安の正体だということです。

サイトも同じで、ユーザーにとって最も怖いのはこのページが自分に何を求めているのか分からない状態です。ファーストビューでCTAを見た人は「いや、まだ問い合わせないよ」と内心ツッコみながら下へ進みます。そのツッコミによって、ページの意図を把握して安心している。だから押されなくても置く意味があります。

人間が毎回この観点を思い出す必要はありません。リストに書いてあれば、機械が指摘してくれる。

目の代わりを用意する

現在のエージェントは画面を直接見ているわけではないため、ビジュアルの検証にはスクリーンショットを撮って参照させます。またデザインの雰囲気は企画書側に書き戻せません(フォントやポイント数などのデータ的な要素は戻せます)。完成したHTMLを近いフォルダに置いて参照させると、次に作るものが雰囲気を引き継ぎます。基準物をフォルダに置いておく、という発想です。

フォルダに条件を書き込む

8要素の次は、毎回言わなくて済むようにする作業です。ルールファイルはフォルダ単位・エージェント単位で設計できます。

ここに注意点がありました。ルール付けを頼むとき、「このフォルダの」と明示しないと、ワークスペース全体に適用しようとするエージェントがあります。範囲を指定して初めて、そのフォルダ限定の条件になります。

書き込む条件は、大きく2種類に分かれました。

1. 毎回必ず入れるもの

  • アクセス解析の計測タグ
  • メタタグ(タイトル・説明・OGP)
  • 量産するLPには noindex(似たページが大量に検索へ出ると、見る側が混乱する。検索に出すのはメインのページだけにする)
  • 最初からスマホ用として設計すること(不動産・飲食・塾は閲覧のほとんどがスマホになる、というのが講師の実感値。PC版から変換するより確実)

枚数が増えるほど、あとから手作業で直して回るのは不可能になります。だから最初にルールへ書く。

2. 二度とやらせないもの

手元のフォルダには財務データも顧客リストもあります。公開用のフォルダにそれを混ぜない、というルールです。ここで、この日いちばんAX的な一言が出ました。

「AIが個人情報を書き込んでくることが、たまにあります。そういうときは修正するだけでなく、『二度とやらないで』をその場でルールに書かせる。それで次から起きなくなります」

都度の修正で終わらせると、同じ事故が毎回起きます。修正のたびにルールへ昇格させれば、直した経験が資産として残る。この勉強会のレポート自体も自動生成が土台になっており、初稿には参加者の実名が入ってくるため、抜く処理をルールとして持たせている、という実例が添えられていました。

指摘の履歴そのものを蓄積する

もう一段進んだ運用も共有されました。企画書に改訂・指摘の履歴を残すルールを付けるという方法です。誰がどこをどう指摘して、どう変えたか。これが企画書ごとに溜まっていくと、AIが「この人はどこを指摘するか」を先回りできるようになります。

実演の場面では、訴求軸が抽象的なまま置かれているのが指摘されました。参加者が「文字にすると陳腐になってしまう」と言ったのに対する答えがこうです。

「でも、そこは文字にしなきゃダメだよ。だって向こうはLLMなんだから」

人間同士なら伝わる余白が、相手が言語モデルであるときには成立しません。「食べた瞬間の体験」といった抽象度では通らず、その商品の何がどう楽しいのかという具体まで書き下ろして、初めて条件として機能します。

ベネフィットとオファーも、条件として書く

8要素のうち、書き方を間違えやすい2つが補足されました。どちらも企画書に書いておけば、以降の生成に効き続けます。

ベネフィット(4番)は、機能で終わらせないこと。「大きいものが届きます」はスペックです。作り手には「届いたら色々できる」という想像力がすでに働いていますが、読み手には働いていません。それを使うとどんな良い時間が生まれるのかまで書いて、初めてベネフィットになります。

オファー(7番)の原則は、割引をしないことでした。

割引をすればするほど、価値が削られる

「仲介手数料半額」を例に、講師は「むしろ不安になる」と述べました。その労力に見合わないのではないか、という疑念が先に立つからです。見落としやすいのは、既存商品への無料追加も実質的な割引になる点でした。付けるくらいなら、その追加分を独立した商品として売るほうが喜ばれます。

では何を特典にするか。デジタル特典です。資料のPDF、スマホの壁紙、「◯◯まる分かり辞典」のようなもの。ここに構造的な指摘がありました。かつて特典制作は大きなボトルネックで、冊子を作れば印刷コストがかかり、個人事業では現実的ではなかった。それがAIエージェントによってほぼゼロコストで内製できるようになった

個人事業でも、マンションのデベロッパーと同じマインドセットが取れるようになった

そして特典は、公式アカウントの登録やオープンチャットへの参加と交換する。目的はリストの獲得です。

計測まで含めて条件にする

作って公開したら終わりではなく、計測の設定までを標準の手順に入れます。

  • CTAはワンタップで問い合わせ先へ直行させる。「お問い合わせ」を押す → 該当セクションへスクロール → フォーム、という中間ステップを全部カットする
  • クリックをキーイベントとして計測する。広告を回せば1クリックごとに費用が出ていく(日本の検索広告はおおむね100〜1,500円の幅で、講師の実感値は150円前後)。計測なしでは判断できなくなる。設定は難しいので、エージェントに手順をガイドさせる

この日の到達点

残り30分は各自のワークでした。プロジェクトを起案し、専用フォルダで企画書を作り、8要素で磨き、制作して公開をキックし、SNS連携まで設計する——という5ステップです。

教育の参加者は、8要素チェックで受けた指摘を反映して修正。不動産の参加者は、実績がまだ少ない事業と蓄積のある事業のどちらを先にやるかを検討したうえで、前者のサービス紹介から着手しました。食品事業の参加者は、LP企画書のなかにSNS企画を併記し、動画 → LP → オープンチャットという導線を1本の企画書に収める設計を進めました。

構成の指針も条件として示されました。実績が積み上がっている事業は実績を全部投入する。まだ実績がない事業はプロジェクトの紹介を並べる。ページの分量そのものが10倍違ってよい。またSNS上で使っている人格名はビジネスサイト側に出さず、SNSからビジネスサイトへリンクする一方向にする、という整理も共有されました。

前日に地方の古民家のLPを作ってきた参加者からは、こんな報告がありました。やったことは「映える写真をとにかくたくさん入れた」だけ。それだけで質が大きく変わった、と。一次情報の量が品質を決める、というこの日のテーマが実地で確認された形です。

次回から、第1部の最終ステップへ

今回でS3が完了しました。企画書を書けばLPが出てくる。出てきたものは条件に照らして自動で検品される。品質は人間の記憶ではなくフォルダのルールが保つ——ここまでが揃うと、「一人で会社ができる」という感覚が固まります

次回(8月10日)からはS4「ビジネスを多面展開する」に入ります。S4を終えるとビジネスモデルが完成し、第1部が終了します。その先のS5〜S7では、経理や人事といった会社の仕組み部分の自動化に進み、「大きい会社を一人で回す」状態へ向かいます。

この勉強会について

横浜の経営者向けAX実践スクールとして、SOVREN Frameworkを使った実践を毎週行っています。教材はSOVREN Frameworkで全文を無料公開しています。


出典

本文中の外部データは以下を参照しました(2026年8月6日確認)。講義中に語られた数値のうち、講師自身の実感値として述べられたものは本文中にその旨を明記しています。