第2回のテーマは、AIに「仕事場」を渡すこと。
そのツールが何者で、どこで動くのか——まずそこを腹落ちさせる回でした。

派手な成果物を作る前に、土台を整える回です。エージェントAIのツールを入れ、AIが読み書きできる作業フォルダを各自のPCに用意し、情報を置く場所を決める。地味ですが、ここが整っていないと後の制作が崩れます。当日の流れに沿って記録します。


まず、道具の役割を整理する

最初に混乱が起きたのが、ツールの役割でした。Cursor、Antigravity、Codex——名前は聞くけれど、どれが何をするのか。講師がここを切り分けました。

  • Cursor=IDE(統合開発環境)。AIが作るファイルを一元的に管理するソフト
  • Antigravity / Codex=エージェント。実際に作業を実行する役

各自が持っているGemini Pro版やChatGPT Plus版のサブスクと組み合わせて、これらを統合した環境を作ります。「ファイルを管理する場所」と「作業する手」を分けて捉える——この役割分担が腹落ちすると、画面の見え方が変わりました。

仕事場はCドライブのユーザーフォルダに

作業フォルダの置き場所にも指定がありました。デスクトップは、ツール間の連携で問題が出やすい。Cドライブのユーザーフォルダの中に専用の作業フォルダを作る。地味ですが、後でパスを扱うときに効いてくる選択でした。


「自動化しない」という哲学

意外だったのが、講師が自動化にブレーキをかけたことです。朝にAIが自動で立ち上がる、といった自動タスク実行は、リソースの無駄遣いとエラーの原因になる。だから推奨しない。作業のたびに、手動でAIをキックする運用を勧めました。

これは実例から来ています。ある参加者が、AI生成コンテンツをカレンダーと同期させたらバグとデータ肥大が起きた、と報告していました。過度な自動化は、便利どころか足を引っ張る。「都度、自分で動かす」が結局いちばん安定する、という結論でした。


ディレクトリは3つに分ける

作業フォルダの中身は、3つに分類します。これが土台の骨格です。

作業フォルダ/
├── Raw Input   — 収集データ・思考の断片・ラフアイデア
├── Project     — 進行中の案件
└── Ontology    — 関連性・人物などのメタデータ

とくにRaw Inputは、思いつきやラフなメモを何でも放り込んでいい場所。ここに自分の思考の断片を貯めることが、AIがあなたを理解するためのナレッジベースになります。「きれいに書かなきゃ」と構えなくていい入口を、まず一つ持つわけです。

オントロジーとは何か

講師の定義はこうでした。オントロジーとは、単にAIに答えを作らせる機能ではない。自分の思考を記録し、分析し、更新し続ける仕組みを、自分のPC上に築くことです。ある参加者がオントロジーを組み直したらノード数が14から42に増え、「関連が深まり、AIがより深く理解している証拠」と共有されました。


AIのMarkdownは「そのまま使わない」

繰り返し強調されたのが、品質管理です。AIが生成したMarkdownを、そのまま使ってはいけない。人間が中身を精査し、自分の言葉や意図に合うよう直す。難解な言い回しは噛み砕かせる。これを怠って「ゴミ」のようなファイルが溜まると、AIの生成品質そのものが落ちていきます。

思考を整理する小ワザも共有されました。ある参加者は、紙を折ってアイデアを書き出し分類する「BSシート」を紹介。AIに入力する前に、頭の中を一度紙で整える手法です。デジタルに入る前のひと手間が、入力の質を上げます。

記録と関連付けの仕組み

土台を強くする3つの道具立ても確認しました。

  • アクションログ:作業やAIとのやり取りを記録するフォルダ。月ごとのファイルで管理し、時刻はざっくりで十分。都度残して習慣化する
  • Readme.md / rules.md:AIへの指示を統一して管理するためのルールファイル
  • Linking JSON:複数の概念やデータを関連付ける仕組み。AIがフォルダ全体を再構築し、思考の地図を精密にしていく

参加者のつまずきと、その場の解決

「画像のMD化を、AIに断られる」

ある参加者が、Googleドライブの画像を読み込ませてMarkdown化しようとして、ファイル量や形式のせいでAIに処理を拒否される、と相談しました。助言は実践的で、処理する量を調整するか、通常のチャット入力を併用する。一度に全部やらせず、刻む。

「アカウントの制限に当たった」

リソース制限の話も出ました。対策は、道具と消費を別アカウントに振り分けること。IDEなどのツールは会社アカウント、AIの利用(リソースを食う部分)は個人アカウント。こうして上限を分散させると、効率よく回せます。表示が英語のIDEを日本語に変える方法(コマンドパレットで「display language」を選ぶ)も、参加者同士で教え合っていました。

「AIが暴走して大量のゴミを生成した」

講師自身の失敗談も共有されました。あるAIが朝から暴走し、不要な長文や自賛的な記録を大量に生成。架空の未来セクションや不適切な記録を削除し、計64ファイルを整理する羽目になった、と。暴走は起きる。起きたら淡々と片づける。その姿勢自体が、運用のリアルでした。


外でも、安全に渡す

PCがない場所での記録

外出先でアイデアをどう残すか、という質問に対しては、怪しい外部アプリは使わず、標準の音声録音アプリで録音し、それをGeminiアプリに読み込ませてMarkdown化する。録音は10分程度に収めるのが、AIの負荷と整理の両面で望ましい。PC環境ならWindowsキー+Hで音声入力ができ、考えをそのままMDに流し込めます。

AIに「全部」を渡さない

安全面では明確な線引きがありました。Cドライブ全体をAIに参照させてはいけない——システムファイルを改ざんされるリスクがあるからです。必要な操作だけを集めた作業フォルダを作り、そこにショートカットを置く。これが最も安全で効率的、と。あわせて、データ形式はPDFやExcelより、軽量でAIの共通言語であるMarkdown・CSV・JSONを使うと、コストを抑えて高速にオントロジーを構築できる、という指針も共有されました。


道具選びと、このツールの本領

整理や構築といった論理的な作業には、性能の低いモデルではなく上位モデル(Claude OpusやProモデル)を使う。能力が足りないと体系的な整理ができません。月20ドル程度のプランで、GeminiとCodexを使い分けるのが現実的な運用、とされました。

このツールは「0から1を生む」ためのものではない。すでにあるデータや完成した作品を整理・分析し、次に繋げるためにこそ効く——参加者と講師が一致した結論でした。

今日のチェックリスト

第2回で各自が進めるべき作業を、手順として残します。

ステップやること
① 道具を入れるCursor(IDE)とAntigravity / Codex(エージェント)を導入し、役割を理解する
② 仕事場を作るCドライブのユーザーフォルダ配下に専用の作業フォルダを作成(デスクトップは避ける)
③ 3つに分ける作業フォルダを Raw Input / Project / Ontology に分類
④ 記録を仕込むアクションログ(月次)と Readme.md / rules.md を用意。日々の思考は Raw Input へ
⑤ 精査するAI生成のMDは必ず人間が確認・修正。ゴミは溜めない
⑥ 関連付ける上位モデルで Linking JSON / オントロジーを構築し、思考の地図を精密化
⑦ 安全に運用Cドライブ全体は渡さず作業フォルダ+ショートカット。形式はMD/CSV/JSON
自動化に頼らず、都度自分で動かす。きれいに作り込む前に、まず「仕事場」を渡す——第2回は、その土台を全員の手で整えた回でした。

この回の内容を、教科書で体系的に

この回で扱った内容は、SOVREN Framework(無料・オープンソース)の教科書 S1「自分の情報体系を構築する」 に、手順として体系的にまとまっています。特別な技術知識は不要です。

S1:自分の情報体系を構築する(教科書)